揺蕩うピーチ 5
2014/11/20 (Thu) 17:00
美咲はもつれそうになる足をなんとか前に出して、改札を抜けた。
司は追いかけてこない。
私が悪い。司ちゃんにあんなことをさせた私が悪い。
血流を速めてズキズキとするこめかみ以上に心が痛かった。
本当に終わりだ。
もう終わり。
司ちゃんとも樹さんとも、もう二度と会えない。
私のせいで。
全部、私のせいだよ。
軽井沢での突然の抱擁にも驚いた。
けれども、その時には感じなかったオトコをエレベーターの抱擁では強く感じた。
樹のことが無ければ確実に間違いを犯していた。姉の夫なのに。
美咲は車内の窓ガラスに映る、泣き出しそうな自分を見つめた。
私、したいと思った。司ちゃんに抱かれたいって。
ごめんなさい。
ごめんなさい。ごめんなさい。お姉ちゃん。司ちゃん。
ごめんなさい。
自分の浅はかさが生んだ結果に、謝罪の言葉しか出なかった。
それから司から誘われることがなくなった。
似合う、そう言ってくれたスーツは帰宅後すぐにクローゼットの奥へと押し込まれた。
三か月後の準備室に移動になった折に命じられたスーツ着用では、新たにパンツスーツを買った。
自分の中の邪な性を封印したいがために、スカートを穿くことはなかった。
女でいることさえ、おこがましい。
どうせ気持ち良くないのだから、女の部分は捨ててしまおうとさえ思っていた。
その幽閉された女の性を優しく包み込みながら解放したのは赤羽だ。
赤羽は懇切丁寧に美咲を扱った。
ずっと若い浮気相手だから?
そんな疑問を美咲は持つことはなかった。
綺麗だ、可愛い、気持ちいい。
そう言って、自分の中で悶える赤羽とのセックスに美咲ものめり込んだ。
秋にずっと自分たちが準備し続けてきたホテルがオープンする。
入社三年目を迎えた美咲は、本来の生真面目さが評価されて上司、後輩と周りからの信頼は厚かった。
その中でも最も信頼を寄せているのは百佳だ。
建設中のホテルが互いの勤務地となった四月からは週に一度は夕飯を共にしている。
「またさ、お兄ちゃん、美咲ちゃんに会いたいって言っているんだ。新しいイメージが湧くんだって」
「それはそれは、光栄です。でも下着のイメージって言うのも恥ずかしいよね」
「完全オリジナルデザインの下着を作ったら、美咲ちゃんに一番にプレゼントしたいって言っているよ」
「いいよ、いらないよぉ。嬉しいけどさ。恥ずかしい」
笑ってから美咲はビールジョッキを傾ける百佳を見ながらウーロン茶を飲んだ。
美咲が百佳の兄を紹介されたのは、前年の暮れ。
百佳と親しくなった四か月後だった。
会って欲しいの、どうしても。
ウルウルと潤む瞳にお願いされて美咲は頷いた。
当初、付き合わせたいのかと思った。
赤羽とのことを話してはいないがきっと気付かれた。
既婚者との交際という関係に釘を刺すために、彼氏のいない自分に彼女のいない兄を会わせたいと言い出したのかと美咲は予想した。
だけど、違った。
百佳は男としての兄を紹介したのではなく、自分の愛する人として美咲に会わせたのだ。
百佳はそんなことを一言も口にしない。
居酒屋のテーブル席で並んで座る二人に格別ないやらしさもない。
それでも、美咲は気が付いた。
百佳と兄は兄妹以上の意思の疎通があると。
まるで、一度だけ会った高平と水絵のように。
あの時の二人のようにイチャイチャとはしないが、目の前の二人は愛し合う男女の仲なのだと美咲は悟った。
兄を見つめる百佳の瞳、百佳に笑いかける兄の表情。
全てに隠せない愛が見えた。
そして、百佳は自分を試したのだとも思った。
兄と妹で愛し合う。
嫌悪を示されたら、それまでのこと。
これ以上は親しくならないと考えていたのかも知れない。
今までのように、誰にも心を開くことなく兄との愛を貫くと決めていたのだ。
嫌悪など感じるわけがない。
散々モテるのに、兄だけ。これほど可愛いのに、一人の男性だけ。
二人の男性の間を行ったり来たりした挙句に傷付けた自分よりも、百佳の一途な想いはとても高尚なものに思えた。
気高くて美しい恋。
辿り着くまで悩み、幾度も苦しんだはず。
美咲は、沈黙し続けた秘密を言葉ないまでも教えてくれた百佳を、それまで以上に大切に想い始めた。
それでも出来ることは、なにも訊かないまま、見守ることだけ。
年頃の女性にも拘らずに、二人の間で恋愛の話は一切出たことが無かった。
「お兄ちゃんさ、来季からメインデザイナーになるんだって」
「へぇー、すごーい。でも、もう考えるの?まだ五月だよ」
「すっごい張り切ってる。憧れだったから。いつかは決定権を持つ、ディレクターとか言うのになりたいみたいだけど。だから、美咲ちゃんに会いたいって。今度はボーリングでもしようか?」
「うん、いつでもいいよ。楽しみにしている」
華奢な百佳とは違う想像を私の豊満気味になりやすい躰だと出来るのかな?
それとも、愛する女性の友達として信頼されているのかな?
美咲はそんなことを考えつつ、自分のことのように喜ぶ百佳をやはり、美しいと思った。
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司は追いかけてこない。
私が悪い。司ちゃんにあんなことをさせた私が悪い。
血流を速めてズキズキとするこめかみ以上に心が痛かった。
本当に終わりだ。
もう終わり。
司ちゃんとも樹さんとも、もう二度と会えない。
私のせいで。
全部、私のせいだよ。
軽井沢での突然の抱擁にも驚いた。
けれども、その時には感じなかったオトコをエレベーターの抱擁では強く感じた。
樹のことが無ければ確実に間違いを犯していた。姉の夫なのに。
美咲は車内の窓ガラスに映る、泣き出しそうな自分を見つめた。
私、したいと思った。司ちゃんに抱かれたいって。
ごめんなさい。
ごめんなさい。ごめんなさい。お姉ちゃん。司ちゃん。
ごめんなさい。
自分の浅はかさが生んだ結果に、謝罪の言葉しか出なかった。
それから司から誘われることがなくなった。
似合う、そう言ってくれたスーツは帰宅後すぐにクローゼットの奥へと押し込まれた。
三か月後の準備室に移動になった折に命じられたスーツ着用では、新たにパンツスーツを買った。
自分の中の邪な性を封印したいがために、スカートを穿くことはなかった。
女でいることさえ、おこがましい。
どうせ気持ち良くないのだから、女の部分は捨ててしまおうとさえ思っていた。
その幽閉された女の性を優しく包み込みながら解放したのは赤羽だ。
赤羽は懇切丁寧に美咲を扱った。
ずっと若い浮気相手だから?
そんな疑問を美咲は持つことはなかった。
綺麗だ、可愛い、気持ちいい。
そう言って、自分の中で悶える赤羽とのセックスに美咲ものめり込んだ。
秋にずっと自分たちが準備し続けてきたホテルがオープンする。
入社三年目を迎えた美咲は、本来の生真面目さが評価されて上司、後輩と周りからの信頼は厚かった。
その中でも最も信頼を寄せているのは百佳だ。
建設中のホテルが互いの勤務地となった四月からは週に一度は夕飯を共にしている。
「またさ、お兄ちゃん、美咲ちゃんに会いたいって言っているんだ。新しいイメージが湧くんだって」
「それはそれは、光栄です。でも下着のイメージって言うのも恥ずかしいよね」
「完全オリジナルデザインの下着を作ったら、美咲ちゃんに一番にプレゼントしたいって言っているよ」
「いいよ、いらないよぉ。嬉しいけどさ。恥ずかしい」
笑ってから美咲はビールジョッキを傾ける百佳を見ながらウーロン茶を飲んだ。
美咲が百佳の兄を紹介されたのは、前年の暮れ。
百佳と親しくなった四か月後だった。
会って欲しいの、どうしても。
ウルウルと潤む瞳にお願いされて美咲は頷いた。
当初、付き合わせたいのかと思った。
赤羽とのことを話してはいないがきっと気付かれた。
既婚者との交際という関係に釘を刺すために、彼氏のいない自分に彼女のいない兄を会わせたいと言い出したのかと美咲は予想した。
だけど、違った。
百佳は男としての兄を紹介したのではなく、自分の愛する人として美咲に会わせたのだ。
百佳はそんなことを一言も口にしない。
居酒屋のテーブル席で並んで座る二人に格別ないやらしさもない。
それでも、美咲は気が付いた。
百佳と兄は兄妹以上の意思の疎通があると。
まるで、一度だけ会った高平と水絵のように。
あの時の二人のようにイチャイチャとはしないが、目の前の二人は愛し合う男女の仲なのだと美咲は悟った。
兄を見つめる百佳の瞳、百佳に笑いかける兄の表情。
全てに隠せない愛が見えた。
そして、百佳は自分を試したのだとも思った。
兄と妹で愛し合う。
嫌悪を示されたら、それまでのこと。
これ以上は親しくならないと考えていたのかも知れない。
今までのように、誰にも心を開くことなく兄との愛を貫くと決めていたのだ。
嫌悪など感じるわけがない。
散々モテるのに、兄だけ。これほど可愛いのに、一人の男性だけ。
二人の男性の間を行ったり来たりした挙句に傷付けた自分よりも、百佳の一途な想いはとても高尚なものに思えた。
気高くて美しい恋。
辿り着くまで悩み、幾度も苦しんだはず。
美咲は、沈黙し続けた秘密を言葉ないまでも教えてくれた百佳を、それまで以上に大切に想い始めた。
それでも出来ることは、なにも訊かないまま、見守ることだけ。
年頃の女性にも拘らずに、二人の間で恋愛の話は一切出たことが無かった。
「お兄ちゃんさ、来季からメインデザイナーになるんだって」
「へぇー、すごーい。でも、もう考えるの?まだ五月だよ」
「すっごい張り切ってる。憧れだったから。いつかは決定権を持つ、ディレクターとか言うのになりたいみたいだけど。だから、美咲ちゃんに会いたいって。今度はボーリングでもしようか?」
「うん、いつでもいいよ。楽しみにしている」
華奢な百佳とは違う想像を私の豊満気味になりやすい躰だと出来るのかな?
それとも、愛する女性の友達として信頼されているのかな?
美咲はそんなことを考えつつ、自分のことのように喜ぶ百佳をやはり、美しいと思った。
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